作:宇野木真帆
「辞めていく会社を批判しないでほしい」
 テーブルの上のコーヒーが冷たくなる頃、それは保身にしか聞こえなかった。
 ヨーイドンっと必死に走った結果、ゴールなんか見えないうちにずっこけた。
 そして次の会社もずっこけ、またずっこけ、それでもまた、私がスタートラインに立てるのは、上司のこの言葉があったからだ。
 「それは自分を否定することになる。辞めていく会社は批判しない方がいい」
 保身か親切か受け取り方は自分次第。
 辛かった出来事を全て糧にできれば、いつか必ずゴールテープを切れるはず。



