絵を見て、音が聴こえるなんて、初めてのことでした。
ロマンティック・ロシアは、渋谷のBunkamuraザ・ミュージアム30周年記念として催されています。
モネやルソー、とりあえずヨーロッパの画家しか分からない。
そんなわたしでも、ロシアだけですよ、と集めてもらったら、
いつも見ている絵とは、なんだか違うことは分かりました。
先入観でしょうか。
極寒のロシアは、厳しい、寂しい、切ない、みたいなあの感じ。
春から冬までに分かれたロシアの絵は、もちろん花もあれば緑もあるけれど、
どことなく、ロシアだなぁ、というのがあるんですね。
そう、新潟や長野のような、静まりというか、おちつき、みたいなあの感じ。
ふっと、そこにあるひかりが、すきです。
ロシアの絵には、そういうひかりが、どの絵にもあってよかったです。
光の魔術師と呼ばれるミレーより、やさしいひかりですね。
でも、これは目で観る話。
耳で聴く、絵があるんです。
『正午、モスクワ郊外』 からは、風の音が聴こえます。
おおっきな絵ではないんですけど、空の広がりを感じると、聴こえてくる。
黄金の稲穂を抜ける、ざぁーっという風の音。
相性でしょうね、絵との。
画家のイワン・シーシキンさんは、きっと、空がすきで、雲がすきだったのでしょう。
でなければ、こんな雲は描けません。
そして、空も。
うすくて、やわらかい、すてきな空です。
そして、もう一つ。
『雨の樫林』からは、さぁーっという雨の音が遠くで聴こえます。
それは、ただ降っているだけ。
ぽつぽつと降ったり、ざぁーっと降る、意味を見いだせるような雨降りではなく、
ただ静かに、さぁーっと降っている。
どこまでも静である、イワン・シーシキンさんの絵です。
心の故郷は国境を越えて、つながることができるようです。